<< 地下室の手記 / ドストエフスキー【これはもう、極北に実在した偉大なるリアル・ニートの記録(鑑)と言って、良いのではないでしょうか?】 | main | 狂人日記 / ゴーゴリ(訳;二葉亭四迷)【これはもう、露西亜に実在した偉大なる狂人の記録(鑑)と言って、良いのではないでしょうか?】 >>
主人公の「私」は、伯父の家に下宿してい、そこに住む従妹の雪江に焦がれているのですが、
【本文】
「貴方、御飯が喰べられて?私、何ぼ何でも喰べられないんだから。」
と微笑する。何時見ても奇麗な歯並だ。
私も矢張り莞爾(ニッコリ)して、
「私も喰べられませんでした。」
大嘘!実は平生(いつも)の通り五杯喰べたので。
雪江さんは国産まれでも東京育ちだから、
「…にも、お芋が有って?」
「有りますとも。」
「じゃ、帰っても不自由がないわねえ。」
と又微笑(ニッコリ)する。
【解説】
何故、「私」が、小食漢を演じているのか意味が判りません。でも、何か、面白れえです。んで、雪江さんがテメエの部屋に来んですが、
【本文】
ああ求むる者に与えられたのだ。神よ…といいたいような気になって、無論莞爾々々となって、
「いいえ…まあ、お入ンなさい。」
「じゃ、私、話して行くわ。奥は一人で淋しいから。」
珍客々々!之を優待せん法はない。よ、よ、と雪江さんが掛け声をして障子を開けようとするけれど、開かないのを、私は飛んで行って力任せにウンと引開けた。何だか領元(えりもと)からぞくぞくする程嬉しい。
【解説】
一人で大エキサイティング大会開催。その後、雪江さんの部屋へ出向き、
【本文】
ついと起(た)ったから、何を為(す)るのかと思ったら、ツカツカと私の前へ来て直(ひた)と向合った。前髪が顎に触れそうだ。粉(ぷん)と好い匂いが鼻を衝く。
「ね、ほら、一尺は違うでしょう?」
私はわなわなと震い出した。目が見えなくなった。胸の鼓動は臓へまで響く。息が逸(はず)んで、足が竦んで、もう凝(じい)として居られない。抱付くか、逃出すか、二つ一つだ。で、私は、後の方針を執って、物をも言わず卒然(いきなり)雪江さんの部屋を逃出して了(しま)った…
【解説】
何たるこの、勇猛なるチェリーっぷり!結局その後、雪江さんとは何にもないんですが…。
このような普遍性を持ち得た作品を描いた二葉亭四迷は、矢張り、偉大な作家であったと言わざるを得ません。
あの、読んで損はないと思うんで、良ろしかったら、是非!
それでは!
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